61人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
第2話 居酒屋にて
東は予定より早い時間に着いたが、新庄は先に待っていた。
ベージュのチェスターコートー、ロイヤルブルーのケーブル編みニットセーター、ブラックのスキニーパンツ、ブラウンのキャンバスシューズ。
メガネもいつもと違う、シャープなリムレスタイプに変わっていた。
職場で見る新庄はダボついた作業着を着ていて、冴えない感じだが、私服で会うとまるでモデルのようだ。
そのせいか、モジャモジャのパーマ頭までオシャレに見える。
東は思う。
……新庄くんってよく見ると背も高いし、顔も整っていて、細いけど筋肉もしっかりついているんだよな。
東は、黒のモッズコートに黒の細身のパンツ、インナーは黒の長袖ドレープシャツ、黒のブーツで、今さら全身黒で来た事を後悔する。
……しまった。
なにも考えてなかったから真っ黒に……。
人と会う時は、なるべく黒い服は着ないようにしていたんだけど、忘れてた……。
「早いですね、東さん」
「いや、ごめん。待たせちゃったかな」
「いま来たとこです」
新庄はそう言うと、持っていた文庫本をコートのポケットにしまった。
東は訊く。
「なにを読んでいたの?」
「村上春樹の『女のいない男たち』です」
最初のコメントを投稿しよう!