ホームの地縛霊

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 ホームから逃げようとした男を追いかけ、強く腕を引っ張った。  幽霊が生身の人間に触れる筈がない。そう思ってたけど相手の腕を掴み締め、ホームに連れ戻すことはたやすかった。  さっきの態度からして、アタシの姿は見えてるよね。でも頭とか下げなくていいから。逃げようとした奴が、罪を認める的なパフォーマンスしなくていいから。  アタシの望みはただ一つ。償って。アタシと同じ状態になるって形で償って。  また電車の遅延が起きるから鉄道会社の人には申し訳ないけれど、それ以外、アタシの気持ちは収まらないもの。  男の顔が恐怖に歪む。列車がホームに向かってくる。  毎日ずっと聞き続けていた轟音と震動。それはもうじき止まる筈。  暗がりに現れた列車のライト。その真ん前へ押し出すように、恐怖に引きつり切った男の体を突き飛ばした。  ホームにいた人、ごめんなさい。エグいもの見てトラウマになっちゃうかも。  でもアタシはこの上なくすっきりしたよ。  あ、なんだか周りが明るくなって来た。こんなことしたけど、アタシ、天国に行けるのかな、だったら嬉しい。  ちなみに、今線路上で肉塊になってる奴は二度と関わりたくないから、アイツはこっちに来ないでね。  そんなことを思う間にも、意識も体も光に包まれる。  色々意識をよぎる面影はあるけれど、それも全部光の中に消えていく。  ずっと居すぎて飽き飽きしてたけれど、見納めと思うとなんだか淋しくなる、毎日見ていた駅のホームよ…さよなら! ホームの地縛霊…完
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