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ホームの地縛霊
「◯番ホーム、電車が参ります。危ないですから白線の内側までお下がり下さい」
すっかり聞き慣れた注意喚起のアナウンス。
通勤・通学の人でごった返す駅のホームで、学校に向かいながら毎日毎日聞き続けていたそれを、まさか死んだ今も聞くことになるなんて。
アタシの死因は轢死。ホームから転落し、滑り込んで来た列車にはねられ即死した。
そう。アタシはもう死んでいる。それは自分で判っている。でも成仏なんてできない。だって、自分が死んだ理由をちゃんと知りたいもの。
子供の頃、駅のホームではしゃぎすぎ、駅員さんに叱られた。
万が一の時にはキミが死んでしまう。だから駅のホームでふざけてはいけないと諭された。
あれ以来、駅で騒ぐはおろか、危ないと思われるようなことは可能な限りしないようにしてきた。あの日も確か、白線の内側ギリギリどころかかなり遠くで列車を待っていた。
なのにホームに落ちるなんてありえない。
そう思ったけれど、アタシはもう死んでいて、きちんと調べてほしいという訴えは誰の耳にも届かなかった。そう、両親や親友の耳にも。
幽霊なんだから、誰に声が届かなくても仕方がない。そう思うものの、どんな理由で自分が死んだのか判らないことが不満で、その気持ちのせいか、気づくとアタシは駅にいた。自分が死んたホームに立っていた。
毎朝どころか、一日中ずっとここにいる。たまに意識が薄れて何も判らなくなるけれど、気づくといつも駅のホームにいる。
死んでいるという自覚はあるから、多分、正確に『どうして死んだのか』が解明されない限り、アタシは成仏はできないのだろう。
でも、どうすればきちんとした真相を解明できるの?
だってアタシ、人混みに押されて線路に転落したんだよ?
誰か個人の仕業じゃない。一番押す力が強かった人ですら犯人扱いはできない。そのくらいたまたま偶然の事故。それでアタシは死んだの。
犯人が判ることなんてない。だからきっと、アタシはずっと成仏できずにここにいなきゃならないんだろうな。
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