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なんか悔しくて、今度は僕から口付けてやった。
顔を真っ赤に染めて、「いきなりは反則だろ!?」と怒る水仙を見て僕は笑った。
「はははっ、好きだよ、水仙」
「……っ!?だ、だから、いきなりは反則だって言ってるじゃないか!!」
そう言ってる間にも、彼女の体はどんどん透けてキラキラ輝いて消えていく。それは水仙自身も分かっていて、彼女はその綺麗な金色の瞳に涙を溜めて言った。
「もう、お別れか……じゃあな、颯。また逢えるといいな」
そんな彼女の顔が見たくなくて、消える前に僕の想いを全部伝えた。
「水仙!僕は、君を忘れない!絶対に忘れたりしない!ずっと君が好きだ。だから、笑って?」
水仙は驚いた顔をして、それから瞳に溜まっていた涙が一筋流れて、僕が見た中で一番綺麗な笑顔を向けた。
「ありがとう、颯」
そう言って、彼女はこの世界からいなくなった。
あれから五年、僕は今でもあの場所を訪れている。
水仙が咲く時期に、水仙と出逢った場所に来て、彼女を思い出す。
水仙の怒った顔、泣いた顔、意地悪な顔、そして、笑った顔。今でも鮮明に思い出せる。
「ねぇ、水仙。大福、食べるでしょ?」
くすっと微笑んで、僕はいつも彼女が座っていた場所に彼女が大好きだった大福を置いて、その隣_僕の定位置に座る。
『ああ、食べるに決まっているではないか』
そう言って隣で笑う彼女が見えた気がした。
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