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父さんが死んでこの男と母さんは結婚したのだが、暴言・暴力ばかりを振るう最低の男だった。母さんはそれが嫌になり、僕を捨てて家を出ていった。それからは僕が暴力の対象。それはちょうど水仙に出会う少し前から始まったのだ。
「おい、お前、やたら出かけてるが、女でもできたのかぁ?」
「……義父さまには関係ないと思いますが」
「関係あるんだよ…。お前、化物と会ってるな?」
化け物?まさか、水仙のことを言ってるのか?確かに彼女は人間じゃない。でも、化け物なんかじゃない。
「あの人はそんなんじゃありませんよ」
「へっ、まあいいさ。その女はどうでもいい。俺はなぁ、ハヤテ。あの土地が欲しいのよぉ」
「……っ!?」
まさか、あの土地欲しさにあの場所を潰すって言うのか!?
義父は暴力を振るう最低男ではあるが、お金だけはたんまりと持っている。いわゆる富豪だ。だから、土地を欲しがってもおかしくないが、あの土地だけは……。僕と水仙が出逢った、あの場所だけは潰されるわけにはいかない。
そんな反抗的な目を義父に向けると、彼はケラケラと笑いだした。
「ふはははははっ!ハヤテ、お前がそんな反抗してももう決まったんだ。潰すのは今日なんだからなぁ?」
「……っ!!」
それを聞いた瞬間、僕は家を飛び出していた。
水仙……っ!無事でいて……っ!
あの場所に向かうと、台車がいくつも置いてあり、その台車には土地をならす農具や工具がたくさん乗せられていた。そして、男が五人いた。義父に雇われた男たちだろう。
僕は男たちに声をかけて、止めに入る。
「や、やめて!この場所に手を出すな!!」
「あぁ?何だこのガキ?」
拳をぎゅっと握り、僕は男たちを睨みつけた。しかし、後ろから笑いながら声をかけられた。
「くくくっ、ハヤテ、無駄だぜぇ?お前には何もできねぇよ」
義父だった。あとから来たのだろう。
「義父さま……。いくら貴方でも、ここは潰させない」
「へへっ、できねぇくせにいきがってんじゃねぇよ、糞ガキがぁ!!」
それからは想像通り、僕は義父たちに立ち上がる力も出ないくらいにボコボコに殴られてしまった。
それでも、僕は、ここをどく訳にはいかないんだ。
僕はなんとか膝立ちして、手を広げた。この場所を潰すなと、手を出すなと。
「しつこいなぁ、お前も……っ!!」
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