颯に揺られた水仙

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 水仙の花と一緒に蹴られそうになったその瞬間、僕の周りが光り輝いて、殴ろうとしてた義父たちが吹き飛ばされた。あまりに驚きすぎて、彼らは「ば、化け物ぉー……っ!」と叫んで逃げていった。  だけど、そんなこと僕にとってはどうでもいい。  振り返ると、光を放った手を義父たちのいた所に向けた水仙がいた。 「水、仙……?」 「無事か……?颯………」  瞬間、彼女は力尽きたように倒れた。 「水仙!」  僕は彼女をギリギリのところで受け止めた。そして、僕は叫んだ。 「何やってるんだよ!?」 「何…って、お前を、守っただけだ」 「だから何でそんな事……!」  怒鳴る僕の頬に手を当てながら彼女は力なく笑った。その手はとても冷たくて。 「怒るなよ、颯。私はお前を守りたかったから守っただけだよ。……お前が気にする事無い」 「何で、こんな時にちゃんと名前で呼ぶんだよ……。何で僕なんか守ったんだよ!?」 「理由、が……必要か?」  コクリと僕は頷いた。すると、水仙は語りだした。その姿はかすかに()けているような気がした。 「私はな、水仙に宿る精霊なんだ……。だから、水仙が咲くこの時期にしか実体を持つことができないんだ」  ……だから、僕と会う時、水仙の咲く時期だけって…。 「そして、私のような精霊は霊力がとても弱い…。だから、一度でも力を使えば…もう姿を保てない……」 「それなら、また来年咲く頃に……」  僕が言い終わる前に彼女が弱々しい声で悲しげに叫んだ。 「会えないんだよ…!…もう、会えないんだ」 「なん、で……?」 「力を使い切ったんだ、私の命が尽きる。当然だ。だから、もう二度と会えないんだよ……。その証拠に私の体、透け始めてるだろ?」  水仙の体が透けているように見えたのは気のせいじゃなかったようだ。僕は声を荒らげて叫んだ。 「そんなの……そんなの、嫌だよ!!僕は…、僕は君が……っ!!」  好き、そう言おうとしたのに、唇を水仙のそれで塞がれた。唇が離れたと思ったら、笑顔で告げられた。 「颯、好きだ。大好きだ」  まさかそんなこと言われるとは思わなくて、僕は一瞬目を見開き、くすっと笑った。その時、自分の目から涙が一筋流れたような気がした。 「馬鹿……。僕に言わせろよ…」 「ははっ…、颯、泣くなよ……」 「な、泣いてないし!」
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