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なんとかして逃げなければ。
焦る気持ちとは裏腹に、疲れきった体はいうことをきかない。
膝をがくがく震えさせながら、少女はひたすら後ずさりを続け、肩甲骨に固いものがぶつかったことに気付かないまま足を動かした。
額から滴り落ちる冷たい汗が気持ち悪い。
少女は再び意識が鈍るのを感じた。
寄りかかった木に爪を立てながら、なんとかその場に崩れ落ちそうになるのを堪えるが、もう限界かもしれない。
この小さな身体にはもう何度も無理を強いた。
今一度、目の前の幽鬼を消失させる魔力を搾りだせるかどうか。
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