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(やはり、ダメかもしれない……)
木の幹に背中を預け、呪文を紡ごうと開いた口からは息も洩れない。
暗闇の中で揺れる青白い炎は、少女の眼前にあった。
霧の蛇がその体を横に広げ変化させた。
少女の身体を覆い尽くそうとするかのように。少女の視界は白い闇へと変わる。
いや、変わろうとした時、その闇を一筋の光が斬った。
おぞましい絶叫をあげて霧の蛇が辺りに四散する。
木の幹にもたれ、朧げな意識を繋ぎ留めながら少女は見た。
背の高い、黒いマントを着た何者かが、白銀の光を宿す剣を手にして、目の前に立っているのを。
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