【1】神殿騎士

11/13
前へ
/347ページ
次へ
「大丈夫かい? お嬢ちゃん」  襟足まで伸びた黒い髪をふわりと揺らし、目の前の男は白い手袋をはめたそれを少女に向かって差し出した。  薄暗くて顔は良く見えないが声が若い。  多分、二十過ぎの青年だろうか。 「……お嬢ちゃんって、呼ぶな」  少女はその手を拒むように払いのけようとしたが、すでにその体力は尽きていた。 「おっと。危ない」  前に傾いだ少女の体を、黒髪の青年は剣を持たない方の手で受け止めた。  新雪のような輝きを放つ白い三つ編みの髪が、小さな背中で弱々しく揺れる。
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!

181人が本棚に入れています
本棚に追加