【2】ひと時の休息

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「わかった。リセル。これでいいか?」 「ああ、結構だ」  少女――リセルは安堵の表情を浮かべ、ようやく落ち着いたかのように肩の力を抜いた。  それを半ば残念そうに見つめながら、青年は口を開いた。 「じゃ、私も名乗っておこうか。私は神殿騎士のルヴォーグだ」 「る、るぼーぐ?」  リセルは発音しにくそうに顔を歪めた。  するとルヴォーグはやれやれと肩をすくめながらつぶやいた。 「そう、どうも王都の人間に、南部出身の私の名前は発音が難しいみたいなんだよな。ああ、無理にちゃんと言う必要はない。私の事は皆『ルーグ』と呼ぶから」 「あ、でも」  リセルはルヴォーグの顔を見上げ首を振った。 「いや、そういうわけにはいかない。誰だって自分の名前を間違われたら、嫌な気持ちになる。第一失礼だ」  ルヴォーグは一瞬戸惑ったように瞬きした。が、その顔には微笑が浮かんでいた。
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