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「ありがとう。でも、私としては『ルーグ』と呼んでもらう方がいいんだ。君が魔法使いならわかるだろう? 真名は普段使わないほうがいいって事」
リセルは意味ありげにルヴォーグの顔を見上げた。
「……そうだな。神殿騎士は神殿を守るために、時として邪悪なモノ達と戦うことがある。名前を支配されたら相手のなすがまま……だしな」
「そう」
小さく同意したルヴォーグの黒衣の上で、彼の所属を表す銀の剣の首飾りが揺れた。たき火の光を受けてきらりと星明りのように輝く。
「ルーグ。あんたは、王都にある『大神殿』直属の神殿騎士だろう?」
リセルの視線が注がれている首飾りにルーグも視線を落とした。
「それが、何か?」
小さな含みをもたせた声でルーグが答える。
リセルはいつしか自分の体が震えている事に気付いた。
それを抑えるために、お茶の入ったカップをぐっと強く握りしめた。
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