182人が本棚に入れています
本棚に追加
/347ページ
◇◇◇
――まるで悪夢でも見ているようだった。
王都の純白の大理石の神殿は一瞬で瓦礫の山と化し、その下敷きとなった数多くの神官達の血で地面は真っ赤に彩られた。
勿論、神殿を警護していた『神殿騎士団』の団員達も巻き込まれ犠牲となった。
リセルは天井が崩れ落ちた祭壇の前で呆然と立ち尽くしていた。
リセルが無傷だったのは大神官(アーチビショップ)を務める母リスティスが、自ら持つ力を行使して、祭壇近くにいた王やその側近、そして自分の跡継ぎであるリセルをかろうじて神殿の崩壊から守ったからである。
けれど母の魔法の力はそれで大半が失われた。
十五年の長きに渡って大神官を務めた母の力は枯渇しつつあった。
よって彼女は優れた魔力を持つリセルを自分の後継者として指名し、リセルはその資質を証明するため、国王や他の高位神官たちの前で、実際にエルウエストディアス国の守護神・アルヴィーズを喚び出す『召喚の儀』を神殿で行っていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!