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触れられると背筋が凍るような冷気が追いかけて来る。
それは一片の光も射さない漆黒の空を、からからと乾いた骨を鳴らし合う音を立てながら、まるで霧でできた蛇のような姿をしていた。
「まだだ……はぁ……はぁ……もっとたくさん、引き寄せないと……」
少女は背の高い草が生い茂った野をよろめきながらひたすら駆けた。
人目を避けるために羽織った藍色のマントの上で、一本の三つ編みにした雪のように白く輝く髪が揺れる。
姿を見られないように街道を避け、なるべく山道を選んできたのだが、森が途切れてしまったため、やむを得ず強行突破することにしたのだ。
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