【1】神殿騎士

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 カラカラ……。  背後から乾ききった骨がいくつも鳴っている音が聞こえる。  逃げまどう少女の温かな血潮を瞬時に凍らせる快感を得ようと、集まってきた霧の蛇たちが嘲笑っているのだ。  疲労と恐怖で震える足を無我夢中で動かしながら、少女は鮮やかな紅色の瞳を細めた。本当ならとっくの昔に、この小さな体は疲労のあまり地に倒れ伏している。  けれどどうしても逃げ切らなければならないのだ。  あともう少し。  少女は決して後ろを振り返らなかった。  振り返らずともわかる。  あの霧の蛇たちはもはや津波のように数を増し、背後に迫ってきていることだろう。  そして彼等の放つ冷たいおぞましい気に触れれば、自分の心臓は速やかに鼓動を止めるのだ。
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