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カラカラ……。
背後から乾ききった骨がいくつも鳴っている音が聞こえる。
逃げまどう少女の温かな血潮を瞬時に凍らせる快感を得ようと、集まってきた霧の蛇たちが嘲笑っているのだ。
疲労と恐怖で震える足を無我夢中で動かしながら、少女は鮮やかな紅色の瞳を細めた。本当ならとっくの昔に、この小さな体は疲労のあまり地に倒れ伏している。
けれどどうしても逃げ切らなければならないのだ。
あともう少し。
少女は決して後ろを振り返らなかった。
振り返らずともわかる。
あの霧の蛇たちはもはや津波のように数を増し、背後に迫ってきていることだろう。
そして彼等の放つ冷たいおぞましい気に触れれば、自分の心臓は速やかに鼓動を止めるのだ。
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