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少女は真直ぐな草が生い茂る草原をついに走り抜けた。
そのまま、鬱蒼と木々が茂る真っ暗な森の中に駆け込む。
けれど霧の蛇たちは追跡を諦めようとせず、高らかに乾いた声を上げながらその背に迫った。
――皮肉なものだ。
少女はふっと唇に笑みを浮かべた。
少女の目は夜の闇を昼間と同じように見る事ができた。
背後から迫る霧の蛇達の主からこの目を与えられたのだ。
それを今は呪うがいい――幽鬼ども。
時は満ちた。
雪のように白い髪を翻し、少女は両足に力を込めて不意に走るのをやめた。
そこは森が開けた場所で、天を仰げば星のない真っ黒で不気味な空が見える。
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