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ざざっ……!
しんしんとした冷気の渦が幼い少女を見る間に取り囲んだ。
それは落ち窪んだ暗い眼光の奥で青白い炎を揺らめかせている。
けれど少女は生命なき彼等の姿を見てはいなかった。
瞳を閉じ、全身で彼等の気配を感じながら、小さな体に宿るありったけの力をかき集めていた。
(――消え失せろ!)
少女は紅の両目を見開くと、目前に迫った霧の蛇達に向かって両手を突き出した。
「その息吹もてすべてを滅却せよ――『炎の檻』(エルディラン)!」
今にも少女の体を冷気で包み込もうとしていた霧の蛇達は、その小さな手から発せられた炎の渦に反対に包み込まれた。
金と緋の輝く炎は業火の檻と化し、霧の蛇達の退路を断つ。
苦悶の声すら上げる暇もなく、業火の檻に閉じ込められた霧の蛇たちは、瞬時にその姿を蒸気に変えて消失した。
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