【1】神殿騎士

6/13
182人が本棚に入れています
本棚に追加
/347ページ
 ざざっ……!  しんしんとした冷気の渦が幼い少女を見る間に取り囲んだ。  それは落ち窪んだ暗い眼光の奥で青白い炎を揺らめかせている。  けれど少女は生命なき彼等の姿を見てはいなかった。  瞳を閉じ、全身で彼等の気配を感じながら、小さな体に宿るありったけの力をかき集めていた。 (――消え失せろ!)  少女は紅の両目を見開くと、目前に迫った霧の蛇達に向かって両手を突き出した。 「その息吹もてすべてを滅却せよ――『炎の檻』(エルディラン)!」  今にも少女の体を冷気で包み込もうとしていた霧の蛇達は、その小さな手から発せられた炎の渦に反対に包み込まれた。  金と緋の輝く炎は業火の檻と化し、霧の蛇達の退路を断つ。  苦悶の声すら上げる暇もなく、業火の檻に閉じ込められた霧の蛇たちは、瞬時にその姿を蒸気に変えて消失した。
/347ページ

最初のコメントを投稿しよう!