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「ふ……ふふふ……ふっ」
世界が回る。
少女は星一つ見えない暗闇の空を睨み付けた。
背中から地面に倒れたことに気付かないまま。
大地を覆う柔らかな草が、その身体を労るように受け止めてくれた。
霧の蛇達を消滅させた安堵感と、この二日間続いた逃避行の疲れのせいか、少女は急速に眠気を感じた。
「……だ。眠っちゃ……だめ、だ」
少女は塞がりかけた目蓋を意志の力で押し上げようとした。
本当はこの眠りに身を任せたい。すべてを忘れて今は眠りたい。
だがその眠りを他ならぬ自分が妨げている。
何かがおかしかったのだ。
頭の中で鳴り響く警鐘はさらに激しさを増していく。
疲れのせいじゃない。この眠気は。
少女はいつしか自分の歯がかたかたと音を立てている事に気付いた。
寒いのだ。
さっきから。
頬を撫でる風が。
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