二番目に好きな色

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新学期最初のイベントといえば、クラス替えだ。ましてや中学二年のクラス替えなのだ。このまま三年に持ち上がることを考えれば、これほどに重要なイベントはないといえる。  緊張と共に、生徒玄関に張り出された名簿から自分の名前を見つけ出す。次に探すのは…… 「葵、一緒のクラスだよ」 私が探し出す前に、咲に肩を叩かれた。 「これで小学一年から中学三年まで同じクラスになるのか。こういうの、なんて言うか知ってる?」 「運命でしょ」 咲は恥ずかしげもなく、恥ずかしいセリフを可愛こぶって放った。 「腐れ縁だよ」 私は可愛げもなく投げつけるように言うと、咲は笑い声をあげた。 咲の大きな釣り目がちの目が笑うと、クールな美人が優しい印象になり、そのギャップに、女の私でもどきりとする。 教室に行くと、すでに半数以上の生徒が席に着いていた。男女混合で出席番号順の決められた席に座ると、斜め後ろが咲の席で、重なる偶然に思わず頬が緩む。 「長瀬も同じクラスか」 思ってもない方角から名前が出て来て慌てて振り向くと、ちょっと驚くほど長身の男子が私の前の席に座ろうとしていた。 「戸田君、大きくなったね」 見たまんまの感想を言うと、戸田君は眉間に皺を横三本作った。 「おい、親戚のババアみたいなこと言うんじゃねぇよ」 「いや、でも本当によく伸びたね。小学生の時はあんなに小さかったのに」  咲が身を乗り出して感心している。 「おい、そこも。男に小さいとか言うんじゃねぇよ」 戸田君はそう言いながら、豪快に笑った。眉間の横三本の皺がさらに濃くなる。
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