二番目に好きな色

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数学の時間とその休み時間を反芻している自分に気づく。青い花柄のシャープペンを眺めている自分に気づく。二番目に好きな色だったけれど、宝物になりそうだ。 部活の休憩中、水飲み器とグランドの間の階段に座れば、戸田君を見つけてしまう。 「あ、今の戸田、ナイスプレーだね」 隣で咲が弾んだ声をあげた。 「見てなかった」 私も戸田君を見ていたことを知られたくなくて、とぼけた。 戸田を待ち伏せした新学期初日以来、待ち伏せこそしなかったが、たまたま一緒になったりすると、公園までの数十メートルは三人で集団下校していた。咲と戸田君が話す内容に、私は頷くだけ、という集団下校だったけれど、その時間は楽しかった。 だから今日も一緒にならないかな、と期待していた。だが、バドミントン部が終わった時、グラウンドは静かだった。野太い声が聞こえない。野球部はとっくに帰ったようだ。 期待がなくなった帰り道を咲と歩く。 「ちょっと、公園で話さない?」 今日の給食の献立について議論していたはずなのに、急に咲の声に真剣さが増した。 「いいけど」 この道すがらで話せない内容とは、一体なんなのだろうか。嫌な予感がする。 公園にはベンチがあるのに、咲は赤いブランコに座った。私は、青いブランコに座る。咲は座ったまま、ブランコを少し揺らしている。キコキコと金属音が鳴る。沈黙と金属音が、不穏な空気にしている。 金属音が、鳴り止んだ。咲が、私を見る。 「私、好きな人ができた」 「えーそうなの? 誰?」 私には私の明るい声が、空々しく聞こえた。 「戸田」 咲の発音は、綺麗だった。嫌な予感は、的中した。 「そうなんだ。知らなかった」 私は咲に、嘘をついた。 咲はそれ以上、何も言わなかった。「応援して」とも「告白する」とも。ただ静かに立ち上がって「帰ろう」と言った。
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