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第1章
「いた…」
彼が来ていた。高橋翔。
高校時代付き合っていた彼。
知らず、胸が高鳴る。
「美和!こっちこっち」
高校の同窓会、私も行くから行こうよーと誘ってくれた友達の由紀から声がかかる。
「由紀、久しぶり」
「美和、由紀!」
「あ、明美?わーなんか綺麗になったねー」
最初は特に仲良かった友達とくっつき、乾杯して、近況話して、そのうち段々と輪は広がっていく。話題は皆んなが共通の思い出を持つ高校時代のものへと、意識も記憶も遡る。
「マジ、古典の矢野センはやばかったよね。怒ると声が裏返っちゃって」
誰かが矢野先生の真似をして爆笑する。
その空間は、仕事も立場も関係ない、高校の教室となる。
「よー、美和、久しぶり」
それまで男子達と話していた翔が隣に来た。
会場に入ってから、ずっとずっとその存在を意識していた翔が隣にいる。
もう少しお酒を飲んだら勇気出して話しかけようと思っていたけど、翔の方から来てくれた。
翔はやっぱりカッコ良かった。好きなアイドルただの人とならないか、ちょっぴり心配したけど、体型も変わらず素敵な大人になっていた。
動悸が、周囲に聞こえるんじゃないかと思う程、動悸がする。
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