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第2章
高橋翔とは2年で初めて同じクラスになった。いわゆるクラスのイケてる男子グループ内でも、勉強も運動も顔もイケメンの3拍子揃ったヒエラルキーの頂点に立つ人。
私とはたまたま席が隣になって、意識したのはそう、あの時。
翔がバインダーを落として、中の紙やら挟んでいただけだったプリントやらが散らばった。特に意識もなく拾い上げるのを手伝って渡すと、まっすぐな笑顔を見せてありがとうと言ってくれた。
『え…かっこいい…』
『嘘、こんなかっこ良かったっけ?』
『なんか、なんかドキドキする』
そこからはもう毎日がジェットコースターに乗っているような毎日。翔の笑顔を見ると幸せで、難しい顔をしていると心配になり、他の女の子と話しているのを見ると胸が締め付けられた。
前髪を気にして、可愛く見えるスカートの長さを考えて、消しゴムとシャーペンは翔に貸す場面を妄想していつも余分に持っていた。
いつも目で追っていた。
すれ違う時は少しでもスタイルが良く見えるよう、姿勢に気をつけた。
付き合うきっかけは王道のバレンタイン。校内で渡す勇気は無くて、自転車通学の彼が友達とも別れて一人になるまで追いかけた。由紀が一緒にいてくれて、一人になった時「高橋君」と呼び止めてくれたのも由紀だった。
「実はさ、大杉はチョコくれないのかと残念だったんだよね」
「え?」
「いつも俺のこと見てくれてたから、かってに好かれてると思ってて、なのに学校でチョコ貰えなかったから勘違いかと残念だった。マジ嬉しい」
そこから毎日幸せだった。初めてのキスも初めてのセックスも、彼に捧げた。3年になり、卒業後の進路がそれぞれ東京と地元に別れるとはっきりするまで。
「何となくフェイドアウトするのは悲し過ぎるから、良い思い出のまま別れよう」
良い思い出だけを残したいという彼の言葉すらかっこいいと酔ってしまい、泣きながら受け入れた。
今から思うと華やかな都会に向かう人に見切りをつけられただけと、18歳のあの時と違って冷静に受け止めているけれど、嫌いになって別れた訳ではないから、それに今もかっこ良くて、本当にトキメク。
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