第1章 契機

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さっきから俺に向かって、目の前で無表情のままガンを飛ばしまくっているこの人が、ただいま絶賛お世話になってる最中の恩師・上城暁先生である。 先生は、医者どころか、保険医らしからぬ格好をしている人である。具体的に言えば、ボサボサの緩い天然パーマに、年季を感じさせる白衣を着て無精髭を生やした、パッと見不審者なお人である。こんなナリでも、よく見ればイケメンというか、イケオジに見えないこともないため、愛想笑いの一つでもすればまだ印象は良くなるはずなのだが。 この先生、治療中はおろか、普段から真顔のまま、つまらなそうな顔をしていて、とてもじゃないがパッと見では保険医としては最適でない。さっきも言った通り、顔の造りはそれなりに整っているのだが、いかんせん普段から無表情な上、面倒くさがりな御仁なのだ。白衣を着ていなければ間違いなく通報される風体である。
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