4・助手席の女

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 言いそびれたが、私は紗栄子のご主人さん、謙介さんが店長をしている弁当屋に勤めている。保育園に通うとなったら親が共働きでなければ許可が降りない。就労証明書という書類を提出しなければいけないという決まりがある。羅王が入園してから3ヶ月以内に就職先を探さないとならないのに、平日の日中だけ勤務という条件を受けてもらえる職場を中々見つけられなくて、どうしようかと悩んでいたら紗栄子に声を掛けられた。 『もし良ければ、うちの旦那の店で――――』  それが謙介さんとの運命の出逢いだった。  ママ友の旦那の店にお世話になる。  万が一辞める事となったら辞め辛いかも。  初めは抵抗があったけれど、就職先を見つけなければならない期限が目前に迫っていたために渋々面接に行った。弁当屋に気合い入れたミニスカートの白いスーツで。  謙介さんは保育園の入園式の時、チラッと挨拶を交わし合っただけだったけど、  彼の顔がとても……私のタイプだった。      ◇ 「ヒロスエに似てるね」  ほぼ初対面なのに、いきなりのこのフレンドリーさが私の心を動かした。その後、“職場の話題あるあるベスト10”に絶対入ってそうだけど、お互いの血液型の話とかで盛り上がって面接どころじゃなかった。  就職先が決まって良かったと同時に、  ……それ以上に謙介さんに近付けた事が嬉しかった。  ちなみに。 『“伸ちゃん”の趣味は?』  って謙介さんに聞かれたけど、“お菓子作りです”と嘘をついた。  コンパの様な会話を交わした面接を終え、浮かれた顔で帰宅した私。  スマホで検索したヒロスエのアイドル時代の画像と鏡の前の私の顔を照らし合わせてみたり、O型とAB型の相性を占ったりで忙しくて、その日ご飯を作るのを忘れてしまった。  もうすぐ36になるくせに、友人の旦那相手にバカみたいに浮かれてた。  謙介さんの事を考えると、オシッコじゃない方でパンティーが濡れてくる。 『何でもいいから入れたい……』  冷蔵庫の中で冷えてる一本だけ残ってたキュウリの誘惑に負けてしまって、ご飯を作るの忘れたまま、トイレに籠って独りでやってた。  電子レンジで人肌に近い温度に温めれば良かった。  キュウリから便器に、泡立ちながら滴る粘液。  遅がけに訪れた青春。  恋をするって、こういう気持ちになるんだ――――
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