4・助手席の女

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 まるで学生時代に戻ってしまったかの様に。  過去に恋愛経験が無かった分、抜いても抜いても過剰に溢れ出してくる想い。 「おかあさん、よかったね」  使い込んだキュウリをゴミ箱に捨てる私に、  “職場が決まって良かった”と、羅王も一緒に喜んでくれた。  ご飯作るのを忘れてて。しかもゴミ箱に捨ててあったキュウリも見付かって、仕事から帰って来た誠にもの凄く怒られたけど。      ◇ 『お金が無い』  私の上司の妻が、普通コレ言いますか?  私に対する嫌みなのか、コーヒーの香りを楽しみながら呟く紗栄子。これも鼻につく彼女の口癖。  おそらくローンだろうけど、2世帯並みの大きな一軒家持ってるくせに。  うちはせいぜい出掛けるとしたら、1年に1度、隣町の入園料無料のアスレチック公園なのに、『激安プランで思い切って行ってきた』って、しょっちゅうディズニーやユニバのお土産渡してくるくせに。  ランエボと謙介さんのアソコを思う存分転がしてるくせに。  ……意味不明。  トマトジュースなんて、缶のやつなら130円で飲めるのに。  結局、承太郎くんを英会話塾に通わせる通わせないとかのつまんない話題が延々と長引いて11時を過ぎてしまった。 『お金が無いならランエボ売りゃあいいじゃん』  って言ってやろうかと思ったけど、そういやランエボは謙介さんの愛車だった。
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