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謙介さんのランエボの助手席に乗れる権利を持つ紗栄子と私。
私は、およそ月1回単位の密会の度に謙介さんに乗られている。
誠とは違って謙介さんはとても優しい。
愛撫に掛ける時間をとても大切にする。
充分に濡れてきているのに悪戯に穴を避けて焦らす。
こっちから何も言わなくても、触れて欲しいところを丁度いい指圧で触ってくれる。
日替わりコースメニューを、お互い突っつき合って楽しむ様に、して欲しい事をしてくれる。
謙介さんにも気持ち良くなってもらいたくて、私の方も奉仕する。
『着けない方が気持ちいいから』と、ゴムを着けない謙介さんに洞底をつつかれながら味わうスリル。
そして。デート中の一時だけでも、嫌いなママ友の旦那の心を支配している優越感で心地いい。
私の中で激しく音をたてて擦り合って。裏切りの情事で抽出された“甘くないラッシー”がはち切れる限界ギリギリのところで外へ流す。
自分のだけ出すだけ出したら満足してソッコー寝込んでしまう誠とは違って、彼はその後、バスルームでもしてくれる。
誠には教えてもらえなかった絶頂を迎えるまで。二人一緒に全部出しきっちゃうまで導いてくれる。
前、会った時は“駅弁”ご馳走してくれた。
ぽっちゃりさんの貴女には無理よね。
美味しかったわよ、駅弁。
◇
「いい加減、帰らない?」
ぬるくなったトマトジュースを音をたてて飲み干した。私と一緒にお茶した事が嬉しかったのか、それとも実は、今日誘ったのは旦那と私の仲を疑って探りにかかってきたのか。
「うふふ。急にお誘いしちゃってごめんなさいね。また、こんな風に二人で会って話したいわね」
「はぁ。じゃあまた……」
思った通り。言われてしまった。
見た目がほんわか癒し系の彼女の表情から真相を引き出す事は難しい。
まさに、こういうタイプが私の一番の苦手としている部類だけど、“親友”と不倫した(しかも駅弁やった)旦那の秘密を知ってしまった紗栄子が、絶望のあまり乱れ狂う姿はちょっとだけ見てみたい。
一可八可を出て、『今日は楽しい時間をありがとう』と手を振って。ランエボに乗る彼女の姿が見えなくなるまで、余裕の笑顔を見せて見送った。
全く無駄な時間を費やした。
あんな女なんかよりランエボは……
謙介さんは私の方が絶対似合う。
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