4・助手席の女

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 謙介さんのランエボの助手席に乗れる権利を持つ紗栄子と私。  私は、およそ月1回単位の密会の度に謙介さんに乗られている。  誠とは違って謙介さんはとても優しい。  愛撫に掛ける時間をとても大切にする。  充分に濡れてきているのに悪戯に穴を避けて焦らす。  こっちから何も言わなくても、触れて欲しいところを丁度いい指圧で触ってくれる。  日替わりコースメニューを、お互い突っつき合って楽しむ様に、して欲しい事をしてくれる。  謙介さんにも気持ち良くなってもらいたくて、私の方も奉仕する。 『着けない方が気持ちいいから』と、ゴムを着けない謙介さんに洞底をつつかれながら味わうスリル。  そして。デート中の一時だけでも、嫌いなママ友の旦那の心を支配している優越感で心地いい。  私の中で激しく音をたてて擦り合って。裏切りの情事で抽出された“甘くないラッシー”がはち切れる限界ギリギリのところで外へ流す。  自分のだけ出すだけ出したら満足してソッコー寝込んでしまう誠とは違って、彼はその後、バスルームでもしてくれる。  誠には教えてもらえなかった絶頂を迎えるまで。二人一緒に全部出しきっちゃうまで導いてくれる。  前、会った時は“駅弁”ご馳走してくれた。    ぽっちゃりさんの貴女には無理よね。  美味しかったわよ、駅弁。      ◇ 「いい加減、帰らない?」  ぬるくなったトマトジュースを音をたてて飲み干した。私と一緒にお茶した事が嬉しかったのか、それとも実は、今日誘ったのは旦那と私の仲を疑って探りにかかってきたのか。 「うふふ。急にお誘いしちゃってごめんなさいね。また、こんな風に二人で会って話したいわね」 「はぁ。じゃあまた……」  思った通り。言われてしまった。  見た目がほんわか癒し系の彼女の表情(かお)から真相を引き出す事は難しい。  まさに、こういうタイプが私の一番の苦手としている部類だけど、“親友”と不倫した(しかも駅弁やった)旦那の秘密を知ってしまった紗栄子が、絶望のあまり乱れ狂う姿はちょっとだけ見てみたい。  一可八可を出て、『今日は楽しい時間をありがとう』と手を振って。ランエボに乗る彼女の姿が見えなくなるまで、余裕の笑顔を見せて見送った。  全く無駄な時間を費やした。  あんな女なんかよりランエボは……  謙介さんは私の方が絶対似合う。
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