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5・調教と暴力
◇
奥さんの紗栄子にはこんな事、とても出来やしないだろう。
謙介さんと肉体関係になって1年半。最近になって、彼の性癖が次第に露になってきた。
ホテルで使用する手錠。ロープ。マッサージバイブ。あとローション……は折角あるのにまだ一度も使用してないけど。理由は簡単。そんなの無くてもやる気になったら充分に濡れるから。
“やれば出来る子”
手錠&目隠しプレイ初体験の時、手取り足取りレクチャーしてくれた謙介さんに頭を撫でて褒められた。
私にも羅王にも。誠はあんな風に褒めてくれた事一度も無いのに、彼は紗栄子や承太郎くん、そして私に、ちゃんと平等に必要な分の水を撒いて家庭と仕事と不倫を上手くこなしている。
枯れ果てた土にバケツの水をぶっかけてる私なんかとは大違い。
弁当屋の店長を勤めてる彼。
普段は真面目な彼が、仕事用の鞄に隠し持っているこの手錠とかは何処でどうやって手に入れたかと言うと、仕事用のスマホを使い購入して、自宅ではなく職場の方に時間指定して配達してもらったらしい。さすがAB型の謙介さん。A型の神経質さとB型の大胆さを絶妙な割合で持っている。
「奥さんと私。どっちが燃える?」
手錠を掛けられながらの私の質問に彼は、「家内とは承太郎が産まれてからずっとご無沙汰なんだ」と応えた。
本当は、
『奥さんと私。どっちが好き?』
って聞きたかった。
もしもそう聞いたら、この人はどう応えてたんだろう。
『変な事聞くなよ……』って話をはぐらかすのか。
『どっちも大切だよ』そんな傷付けないけど曖昧なズルい返し方するのか。
それとも……
『伸ちゃんに決まってんだろ』――――か。
……って。何考えてんだ私は。
セックスレス。
私も謙介さんと同じ。書斎に籠りっぱなしの誠に嫌気が差してここ1年あの人とはセックスしていない。羅王が産まれて、産後の肥立ちが落ち着いてから週に1度の割合で。それも決まって日曜の早朝に、起きたてホヤホヤの誠の臭い息で『伸子、しようよ……』で目を覚ます。
「ごめん。まだ生理終わってない」
「羅王が起きちゃうよ」
「腰が痛くて出来ない」
毎週言い訳を変えて拒否する。
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