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2・開封
誠……。
私をお買い上げしてったこの人は――――私の“旦那だった”誠。
「……チッ! 新人アルバイトが。テープ張っただけかよ。こーゆー商品は普通、茶色い袋とかに入れるとかすんだろ?」
文句を滴ながら私をブリーフバッグの中へとしまう。
直らない癖なのだろう。まだ夫婦だった頃に、妻だった私に対してもしょっちゅうされたあの舌打ちは、言うと喧嘩になりそうで言えなかったけれど大嫌いだった。結婚してからボロ(舌打ちの癖)があちこちでボロボロ出て来た。舌打ちだけではない。機嫌を悪くした時に発作の様にで出すあのサイン……“貧乏ゆすり”もきっと相変わらず直ってないだろう。その場で相手に面と向かって言わず、自動ドアから出た後にグチグチ文句言う癖も直ってない。
変わったのは外見だけ。
まあ人はこんなもんだね……。
ブリーフバッグに揺られながら溜息。
◇
ちょっと誠。この車って――――!
エンジン掛けたまま駐車場に停まってる車に歩いて近付く誠と私。
これは私達が結婚する前に二人で憧れてた夢のクルマ、ワンボックスカーのヴェルファイア。
ブリーフバッグごと、混乱してる間に助手席のシートに叩き投げつけられた。
あんた、何でこんな高級車乗ってんのよ!?
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