2・開封

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     ◇ 「おかーさん。おとうさん怒ってたよ?  ゲームばっかりやってないで家のこと、ちゃんとやれって」 「うん……」 「いつも疲れたとか言ってるけど、ゲームのやりすぎでだよね? おとうさん言ってた」 「分かった。もう着くから静かにして!」  羅王は悪くない。  嫌味ったらしく誠に言われるのよりこうやって間接的に我が子に言ってもらえる方が全然いいのに、イラッときてこんな風に羅王に頻繁にきつく当たってしまう。 『ごめんなさい』って。子どもにきちんと謝れる様に教えてあげるのが母親の役目なのに。 「おかあさん。きのう僕、ラーメンって言われた……」 「そんなの気にしてちゃ生きてけないわよ。大人になったらもっと大変なんだから。ほら行きなさい、着いたよ!」 「せんせいが、おかあさんに、ぼくをちゃんと靴箱のとこまで連れてきてって言ってた…… 「もう! サッサと行きなさい! お母さん仕事間に合わないから!」  子どもの小さなSOSのサインにも気付いてあげられない。  いつも自分の事だけしか見ていない母親らしからぬ母親だった。  子供が子供を産んだ。  後に誠にそう言われてイラッときたけど、しょうがない。  マイホームの夢。そして新婚当初に二人で描いていた理想の家族像も遠ざかっていくばかり――――
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