3・穴責め

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3・穴責め

     ◇ 「伸子。俺のメシは?」  いつの間にか仕事から帰ってきてた旦那。  寝室で“仕事の人”と電話してて気付かなかった。 「ああ。今用意するね」 「チッ! ちゃんとしてくれ、全く……」  トランクス一枚姿になって風呂場へと消えてった誠。脱ぎたての汗臭い作業服は、あたかも私への当て付けの様にダイニングチェアに掛けてある。  ぐじゃぐじゃに丸めて抱え込んだ汗臭い作業服。洗濯層に入れようとしたら、タイミング悪く足元に落とした納豆に近い臭いを放つ靴下。それを指先で拾い上げながら、声を足した溜息を、風呂場に居る誠に聞こえる様に放つ。  幼い子供がいるのに、笑い声の無い我が家。  夫婦の嫌味のドッジボール。  こんな陰気臭い生活を、この人と何年送り続けていくんだろう。  私と同い年で独身。で、今まで3ヶ月以上彼氏と付き合った経験無いくせに、やけに結婚したがってるパート先の同僚の山本ちゃんに『結婚生活は所詮こんなもんだよ。気を付けな』って隠し撮りした我が家の日常シーン見せながらレクチャーして差し上げたい。  結婚当初、頭に描いてたのはこんなものじゃなかった。  “結婚しました。今後ともよろしくお願いします”  こんな文面で始まるウェディング写真、または新居の前で(うつ)した家族写真葉書ラッシュ。  高校時代の同級生が、付き合ってた彼氏と次々に結婚していった。それに釣られたかの様に勢いで、その時ちょうど付き合っていた誠に結婚を仄めかされて籍を入れてしまったのが人生の汚点だった。  どうしてこんな大してカッコ良くもなく貯金も無い、一緒に居たって全然つまらない人のプロポーズを受けてしまったのだろう。  誠は友達に勧められた合コンで知り合った私の初めての彼氏であり、初体験の相手だった。  初体験も、雑誌やレディコミに載ってるみたいな絶頂がどうとかいった感想は全く湧かなかった。  ビックリしたのはいきなりの穴責め。痛いだけで全然気持ちよく無かったけど、可哀想だったから誠に合わせて腰を動かした。 『気持ちいい?』って聞かれたら、しょうがなく頷くしかない。  声を出さないから不安だったのか、最中に何度も聞かれてめちゃくちゃ鬱陶しかった。
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