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『伸子。どうして欲しい? どうすれば気持ち良くなってもらえる?』
『……体位変えて穴に入れるばっかじゃなくって、もうちょっと上の方触ったりして欲しい』
『わ、分かった! やってみる。
……どう? こうすれば気持ちいいの? ねえ? コレでいいのっ?』
――――セックスで疲れる。
それはこういう事か、と思った。
正直言って、自分の指でやった方が気持ち良かった。
その日以来、誠の足の臭いとか嫌なとこ発見してしまっても、セックスしたからこいつと結婚しなきゃいけない、という概念があった。
私の穴がよっぽど気持ち良かったのか、『ずっと一緒に居て欲しい』と初体験を済ませた直後の布団の中でプロポーズされた。
あのプロポーズを断ってたら、あんな人なんかとは違った素敵な人と巡り会えて、一緒に居れば居る程充実感味わえる薔薇色生活を送れていたのかもしれない。例え独身だったとしても、こんなにイライラしないで自分のペースで気楽に過ごせてただろうに。
――――羅王には会えなかったけど。
「羅王。お父さん帰ってたの気付いてた?」
「分かんなかった。おとうさん、いつも帰ってからすぐゲームの部屋いくもん」
タブレットで人気ユーチューバーの動画を見ながら応える羅王。
風呂から出てきたタイミングを計って、誠に嫌味返し。
「おい。サランラップくらい外せよ……」
温めた今晩のおかずメニューのレバニラ炒めを無表情で口に掻き込む誠。今日は何も言ってこないから美味しく調理出来たらしい。
ゲーム部屋→書斎。
ダイニング。リビング。寝室。書斎。
実家から新居へ引っ越しの時、誠がどうしても書斎が欲しい、って言うからこんな無駄な部屋が一部屋ある。……一戸建てならともかく、アパートだから間取り数が少ないのに。
結果、家に家族で居ても、あの人だけ孤立。
『ごちそうさま』
羅王には“言わなきゃ行儀悪いぞ”って言うくせに自分は言わずに、食べた後の食器をシンクに片付けもしないでそのまま書斎……ゲーム部屋へと入っていった。
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