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あの庭でも、何度もこうして空を見上げた。
ちいさな勝巳の手を引いて。
「うん」
胡粉に薄墨を少し混ぜたような曇り空から、小さなものが生まれ、あとからあとから降りてくる。
色と音を吸い取って、世界を、閉ざす。
二人だけの、秘密の庭。
ぴちゅぴちゅ、ぴちゅ・・・。
毬のように体を膨らませたスズメたちが、近くの軒下に転がり込んで、はしゃいでいる。
鳴き声に誘われて首を回らせると、紅を刷いた花弁が目に入った。
「あれは・・・」
「梅だよ。紅梅」
「それくらい、俺にもわかる」
「そうなんだ」
心底意外そうな声に少し腹が立ち後頭部を強く押し付け全体重をかけると、ごめんごめんと笑いながら抱え込まれた。
「・・・春が来るね」
二人の吐息が、天に上る。
「そうだな」
白い綿が、紅色に溶けて、消えた。
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