17人が本棚に入れています
本棚に追加
「当たり板前」ふふっ
「あ?」
聞き間違いではなければ
物静かな美少女からキレた時のヤンキーみたいな言葉が飛んできた。
当たり前と板前を交えたジョークだったが
和やかになるどころか
一瞬にして険悪なムードに包まれてしまった。
ジョークは不正解だった。
どう取り直すか考えていたら
「……」グスッ
美少女が泣き出した。
「!」
そこで俺は後悔とともに気付いてしまった。
(もしかしたら…大事な人…父親か恋人が板前さんで…)
(その人を亡くしてしまったのではないだろうか…!?)
それならば
板前(自分の大事な人)は本当に存在していたのだろうかという
嘆きともとれる心の葛藤風景に当てはまる
それなのに俺は
よく考え方もせずダジャレを使い雪音さんを傷つけてしまった
(なんて愚かだったんだ俺は)
キレるのも当たり前だ
真剣な問いかけに洒落で返されたのだから
とにかく何とか慰めの言葉をかけなければ
少女が泣く姿なんて見たくない。
何より
泣く雪音さんが
本当に消えてしまいそうに思えたから
消えてほしくないから
おかしな人ではあるけど
きっと心は名前の通り真っ白な雪の音ように
綺麗な人だと思ったから
「…板前さんは…ずっと心の中にいます」
「!」
最初のコメントを投稿しよう!