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口調を改めた男の前、笑っていた女は頬を強張らせ、背すじを正した。
「……はい」
「前世の記憶はすべて消され、地上で人間として生きる選択肢しかないのだが、それでも……」
「え? ちょっと待ってください」
男の言葉の途中で、女は瞬きと共に声を出した。
「いいのですか? だって、私は魂の法則を破って…」
「いや、それはこちらも関与していることだから」
「それに、呪いをかけられた者の魂の救うにはもう一つの魂が必要だって聞い……」
「それに関しては、彼の場合は特例だ。飲み込んでいた数多の魂の中に、キミのように彼を慕う村人が多くいてね。解放されると私の前に集い、一つ分の生命エネルギーの塊になった」
男は手を開き、掌にある黄金色の小さな玉を女に見せた。
「彼の来世のために、君が消える必要はどこにもない」
言って、男は立ち上がる。呆然としつつも、つられるように女も立ち上がる。
「い、いいの……ですか? 人間として生きても……?」
「ああ。長い時間、漂流し続けた魂への労いだと思ってくれ。…ただ……、記憶を消すから、地上で再び、彼と巡り合うことは難しいかもしれない」
静かに言う男の前、女の両頬に涙が流れる。
「かま……い…ません……」
「富くじに当たるような確率だぞ?」
「それでも……万に一つの可能性があります……記憶が消されても……人間として生きられるなら…………」
口元を手で押さえ、号泣する女。その隣に男は立つと、優しく背中に手を添えた。
「面談は以上だ。向こうの扉を開けて進みなさい。管理課の担当者が待っている」
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