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「バッカみたいっ。なによ、この西洋かぶれの寸劇っ。こんな懺悔をするくらいなら、前もって自分の行動を慎みなさいっっ」
女の大声で、パシンと教会の空間にひびが入った。教会の背景は、糊付けする前に持ち上げられたジグソーパズルのように、破片となって崩壊した。白一色の果てのない空間が現れる。
「…………できなかったから、今してるんだろ?」
木の椅子に座ったままずぶ濡れになった男は、前髪から滴る水の中、女を睨みつける。女はシスター服のフードを外し、隠れていた長い黒髪を振るう。シスター服が、胸元と腹部と太腿が大胆に開いた大柄の花模様のツーピース――フリルの長袖が可愛らしさを演出しているものの着丈が短く、胸下5cmの位置で留まっているトップスと、スリットが太腿まで入ったチャイナドレス風ロングスカートをローウエストで着用した組み合わせ――へと変化する。
「ハンコックスタイルも悪くないけど、もったいないよ。ブルーの瞳でグラマーなシスター、フジコちゃんみたいで似合ってたのに」
「ありがと。でも残念。あんたに金髪のロン毛は似合ってないわ」
女は男の前で微笑む。白人特有の白い肌が黄色人種の肌色へと、耳が隠れるほどの長さにあった金髪が耳が出るほどの長さにカットされた黒髪へと、透き通るような青い瞳が色を吸い込んだような漆黒の瞳へと、変化する。それに満足したのか女は笑顔で頷き、男の顔の前に鏡を差し出した。
「うふふ。どう? 清潔感あふれる爽やか青年は?」
「…………悪くないけど、面白くない…………」
女の手から鏡を引き抜くと、男は後ろへと放り投げた。がしゃんと遠くで鏡面が割れる音がする。
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