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男は戸惑う僕を見ても、さして気に留める風でも無く、ズカズカと近付き、僕の隣に腰を降ろすと、満面の笑みを見せて、再び口を開いた。
「ボウズ、名は?」
「…。」
「言葉が解んねぇのか?お前くらいの歳じゃあ、まぁそう珍しい事じゃねぇが…」
この男の脳裏には、自分が警戒されているという考えは無いらしい。
この様子では、逃げ出してもすぐに追いかけてくるだろうし、無視しても意味は無さそうだ。
観念して、僕は名乗る事にした。
「…プルー。」
すると男は、一瞬目を見開き…すぐに腹に手を当てて笑いだした。
「プルー!それがお前の名前だって!?ヘンっな名前だなぁオイッ!!」
そう言いながら腹を抱えて転がり回る男に、僕は無償に腹が立って咄嗟に立ち上がる。
すると男は悶えながらも、指の長さが不揃いな左手をこちらに向け、僕に座るように促した。
「ハハハ…すまねぇっ!いやぁ、あんまりヘンな名前なんでよぅ?本当、悪気はねぇんだ、スマン!!本当に失礼したっ!」
そこで言葉を区切り、改めてこちらへ向き直ると、男は改まって僕を真っ直ぐ見つめた。
「俺の名はグエン。いや、さっきは爆笑しちまって本当に悪かった。こう見えて、一団を率いる身だ。歳の頃は11、2って所か?そんなナリじゃあ食料も寝る場所も無いんだろう?連れは居るか?」
その問いに、僕は首を横に振る。
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