0人が本棚に入れています
本棚に追加
その声は冷静で、非常に落ち着いた声だったが、どこか重みを感じさせた。
口調は柔らかだが、声のトーンはむしろ命令に近い。
「…詳しくは言えない。だけど僕は【青】を探してる。だから、一箇所に留まる事は出来ない。」
目を逸らし、俯きながら話す僕を見て、グエンは僅かに拳を握る。
周りの空気が一瞬、張り詰めるのが解った。
「…ソレは、お前が生涯、安心して暮らせる環境より大事な事か?」
僕はその問いに応えない。
そもそも、この世界にそんな場所があるのか疑問だが…短期間ではあるが、グエンはそんな嘘をつくような男では無いと、直感が告げている。
だけど、ソレが本当だとして、僕は【青】を探す事以上に、ソレが大事だとは思えない。
応えない僕に、特に苛立つ様子も見せず、グエンが更に口を開く。
「…お前の瞳…その色が青だと自覚してなかったようだが、今の世界じゃあ確かに青は珍しい色だ。鏡もガラスも綺麗な水もねぇ今の時代、自分の顔を見る事も無いだろうしな。だが、お前の言う【青】ってのは、何か違う気がするんだが…そもそもその【青】ってのは、何の事だ?」
僕はチラリとグエンの顔を見る。
怒るでもなく、怪しむでもなく、どこか悲しい声でそう聞いたグエンの目に、僕はどんな風に映っているのだろう?
「…解らない。ただ、僕は【青】がある場所に絶対に行かなくちゃいけない。近くまで行けば、それがそうだと僕には解る。詳しくは言えないけど、僕にはそこで、やる事がある。」
それを聞いて、グエンは顔を強ばらせた。
最初のコメントを投稿しよう!