17人が本棚に入れています
本棚に追加
*
一昨日の放課後のことだった。
忘れ物を取りに教室へ向かって歩いていると、静かな廊下に突然「うえーい玲二の負け確定ー!! 最下位うえーい!!」という大きな声と、それを茶化すような騒がしい声が響き渡り、私は思わず足を止めた。
「お前よっわ! 可哀想なくらい弱いんだけどマジか!?」
「わざと負けてんじゃねーの!?」
「……お前らが結託して俺を潰しにかかってきたくせに。よく言うよ」
聞こえてきた声には聞き覚えがあった。この学校でその存在を知らぬ者はいないだろう戸田玲二と、いつも一緒にいるバスケ部仲間の声だ。
彼らの声は二組の教室内から聞こえてくる。大方、部活が休みになって暇潰しに教室でスマホゲームか何かをしていたんだろう。まったく、さっさと帰って休めばいいものを。運動部は元気だなぁ。
そのパワーに感心しつつ、自分の教室へ向かおうと足を踏み出したのだが……。
「はいはーい! 今回も最下位だった玲二くんには罰ゲームを受けてもらおうと思いまーす!!」
誰かのこの発言によって、その足はすぐに止まることとなった。
「はぁあ!?」
「いえーい!!」
「罰ゲーム! 罰ゲーム!」
「ちょっと待ってよ、そんなの聞いてないんだけど」
「言ってないし今決めた」
「ふざけんな」
「なに? 一位のこのオレ様に口答えすんの? え? 五回連続最下位の玲二くんが? マジで?」
「おっまえ……! 後で覚えてろよ!」
悔しそうな様子の戸田くんに、周りは遠慮なく爆笑していた。
……ていうか私、二組の前通らなきゃ自分の教室に行けないんだけど。歩き出すタイミングをすっかり逃してしまった私は廊下に立ち尽くす。なんだか盗み聞きしてるみたいで嫌だなぁ。
最初のコメントを投稿しよう!