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先日のことを思い出して、私は深い溜息をついた。
……まさかあの時の罰ゲームの相手が私になるなんて思いもしなかった。なんだろう、あみだくじでも作ったの? それとも適当に指名されたのかな? どっちにしろムカつくことには変わりない。
ていうか戸田くん、嫌だって言ってたくせに結局罰ゲームで告白とかしちゃうんだ。リア充のイケメンモテ男は好きでもない女の子に平気で告白とか出来ちゃうんだ。へぇ。
きっとこれをネタにまたみんなで騒ぐんだろう。さっきから教室のドアに何人かの影が映ってるし。この茶番を動画にでも撮ってSNSに流したりするのかな。最低。もうこれイジメじゃん。……あーあ、初めてされた告白が罰ゲームだなんてシャレにもならない。最悪だ。
「えっと……返事、もらってもいいかな?」
戸田くんは頬を染めたまま小さな声で聞いてきた。まったく。こんな照れたような演技までしちゃってさ。ホント、人の気持ちをなんだと思ってるわけ? 返事? オッケーすると思ってんの? バカにするのもいい加減にしてよ。私は断りの文句を言おうと口を開いたがーー待てよ、と思い直して一旦閉じた。
……ここで私が普通にフッてしまえばそれで罰ゲーム終了だ。彼らは痛くもかゆくもない。そんなの私は納得いかない。なんとか彼らを懲らしめる方法はないだろうか。私は云々と考える。……そうだ。彼らは私がこの告白を断ることを想定して罰ゲームを仕組んだんだ。だとすれば、私がオッケーを出せば相当困るんじゃないだろうか。
本命が別にいるのにも関わらず、好きでもない女と付き合い続ける。きっと一週間もすれば我慢出来ずに別れを切り出してくるだろうから、その時に罰ゲームで告白してきたことを学校中にバラして、女子生徒からの株を下げる。うん、なかなかいいんじゃない?
「あの……山下さん?」
不安そうにこちらを見やる戸田くんに、私はこれでもかというほどの笑顔を貼り付け、口を開いた。
「いいよ」
「えっ!?」
案の定、戸田くんは驚きを隠せないでいる。
「マ、マジで?」
「うん」
「ホントのホントに!?」
「うん。私でよければよろしく、戸田くん」
戸田くんは顔を真っ赤にしながら口元を手で覆っている。なにこの初々しい反応……まぁいいや。覚悟しろよ、嘘つき野郎。罰ゲームで告白したこと、絶対後悔させてやる。
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