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ムカついたところでバスが動き始めた。
バスのスピードが上がると共に上がってく鼓動。
何か話した方がいいかな……。
でも、こんな人に何話題にして話したらいいのか分からないし、タイミングも掴めない。
すると隣に座っている松浦くんは、あたしの目も見ずに自分の前髪を指先で触りながらボソボソ話し出した。
「ああ、言っとくけどこの塾、原黒中(あたしと松浦くんの通ってる学校)俺とおまえしかいないから。ちなみに、このバスに乗る生徒も2人だけだ」
そう言って、やっとあたしの方を見たかと思ったら、
「――――ってゆーか、おまえ友達いねぇから関係ねーよなァ、ハハ!」
と、小バカにした目で笑い出した。
「――っ!」
本当の事だから言い返す事ができなくて、くちびるを噛んで我慢した。
悔しいけれど、こんな事はよくある事。
この人の事は出来るだけ視界に入れない様に注意して生活してるけど、学校でどうしても関わらないといけない時とか毎度の様に言われてる。しょうがないって事は分かってるんだけど、よりにもよって初日からこんな目に遭うとは。ただでさえ塾に通う事になっただけで憂鬱なのに――――
古寂びれたバスなのか。
走行中ガタガタ音を立てる小さな牢獄の中。世界一……いや、宇宙一大嫌いな看守の隣で、あたしはムシャクシャしながら運転手のびみょうに……いや、気持ちいいくらいに見事に丸い形でハゲた後頭部を見ていた。
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