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別にあんな人の案内なんて要らないもん!
おそるおそる自動ドアを抜けて入ってきた塾の中。
しかし、入ったはいいものの、自分の教室がどこなのか分からない。
後ろの自動ドアから続々と入ってくる生徒達が入り口で茫然と立ち竦んでるあたしを避けて通り過ぎていく。
『すみません。2年生の教室はどこですか?』
出だしの“す”を何回も呟いて諦めた。
みんな学校が違うから、という事もあって、なかなか思い切って声を掛ける事ができない。
えっと、誰か女の子で……親切そうな一人で来てる人とかいませんですか?
目だけキョロキョロさせながら通り過ぎてく人達の中から選ぶ。
まるでクローゼットの中から自分に合った地味な服を一着ずつ手に取って探しているかの様に。
「ねぇ、君」
うわっ! こっ、これは男の子の声っ!
いきなり後ろから声を掛けられて、反射的に振り返りもしないで逃げてしまった。
お願い! 男の子だけは勘弁――――
……なんて、あれも嫌これも嫌って文句言ってる場合じゃない。自分のクラスの場所を聞き出せるせっかくのチャンスだったのに、結局今のであっさり逃してしまった。
しかし運良く、廊下を走って逃げた所に偶然にも職員室らしき部屋を見付ける事ができた。
唾を飲み込んでから、その部屋のドアの小窓にそっと顔を近付けてみる。中を覗いてみると、スーツやネクタイを身につけた先生っぽい感じの人が何人か見えた。
やっと辿り着けたとはいえ、学校と同じで、いくら職員室だって入るのは緊張する。けれども、こんな所でずっと一人で立ち止まってたって何も始まらない。うかうかしてる間に講習が始まる時間がきてしまう。
いくしかない。
思い切ってドアを開けて中に入り、たまたま近くにいた多分先生だろう人に近付き尋ねてみた。
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