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「あのっ! 今日からこの塾に入った2年生の武藤なみこっ、でっす!
えっと、その、あたし……教室が分かりません、くて……
ヘンな日本語に振り向いた先生な感じのおじさん。
グレーのズボンに腕まくりした白いシャツ。赤いネクタイを締め、脂ぎった長髪を手でかき上げながら話すこの人はきっと先生だ。
昔の青春学園モノドラマでなんかこういう人、見た事ある。
「おおっ、君が武藤さんかね。真剣ゼミナールへようこそ。
おほほ、初めてだから緊張しておられるのかもしれませんが、そんなに堅くならなくても大丈夫ですよ。肩の力を抜いてください。
2年生? でしたね。2年生……えぇ、はい。話はお母様から聞いております。今日からでしたね」
“2年生”を異様に強調してた先生。
身長138センチ/体重36キロしかないあたしの体型はどう見たって小学生だからかな。
しまった……。ノックしないで入ってきちゃってた。
外見どころじゃない。中身まで小学生。ヘタしたら低学年児童並み。
なんだ、この子は……。
そう言ってるかの様に口に手を当てて笑いを堪えてる先生と向かい合いながら、こっちは顔面から足の爪先まで熱い。
逃げ出したいけど、大事なところだからちゃんと聞いておかないと。
☆ ★ ☆
「しつれいしました……」
出だしから失礼極まりない態度だった。これじゃあ第一印象最悪。
溜息しながらドアを閉め、先生に教えてもらった通りに廊下を渡って階段を昇った。
あたしたち2年生クラスと1年生クラスの教室は2階になっていて、それぞれAクラスとBクラスの2クラスに分かれている。
あたしのクラスはBクラス。
自分のクラスを聞くついでに聞いてみたところ、松浦くんはAクラスらしい。
天敵と違うクラスになれた事は幸いといえば幸いなんだけど、知らない人達ばっかりの中にいきなり飛び込むのにはかなりの勇気が要る。
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