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教室のドアを開けると、学校の教室より少し狭く感じるくらいの部屋の中に20人くらいの人達が居た。
新しい出会い。
お父さんの言葉が再び頭をよぎる。
多分学校が同じ子同士なのだろう。何グループかに分かれた仲良しグループの塊が、机の周りや壁にもたれて楽しそうにおしゃべりしている。中には静かに一人で本を読んでいる子もいるけれど、“わたしに話し掛けないでくださいオーラ”を出している。
手の平に指でなぞった“人”という字を何回も口に入れながらドアの前で立ち止まっていたら、さっきあたし達が乗ってきたバスを運転していたまんまるハゲの人が入ってきた。
この人先生だったんだ!
あたしの肩にそっと手を置いてから、
「始めるぞー」
ツル……先生の一声で講習が始まり出した。
はッ、はじまるよぉ!
この際どこでもいいやと、たまたま目に入った空いていた席に着いた。
☆ ★ ☆
「連立方程式を解くのに、左辺同士、右辺同士をそれぞれ足すか引くかして、一つの文字を消去して解く方法を加減法といいます。ではまず基本のこの問題を解いてみましょう」
/2x+y=14
\2x-3y=6
え!! こんなのまだ学校で習ってな……
あれ? 習ったっけ?
講習が始まると、さっきまで賑やかだったはずの教室の中が空気が変わった様に静かになった。
居眠りなんかしたら絶対バレるなぁ。
お腹空いた。帰り何時だろ。
そういえば今夜テレビでバカ殿スペシャルやる日だった。お母さんちゃんと録画してくれてるかな。
なんて、みんなが真剣に先生の話を聞いている中、一人でくだらない事ばっかり考えていた。
「1つの文字の係数がまったく同じ式は、そのまま引くと文字を消去できます。はい、上の式から下を引く。式の引き算は、この様に足し算に直して下さいね」
4y=8 ※xが消えたのでyだけの方程式を解く。
y=2
求めたyの値を上の式に代入して――――
駄目だ。さっぱり消えた……。
「はい、ではテキスト58ページ開いてくださーい」
講習の時間をムダな時間をとって費やさないためなのか、新入生の紹介はなく授業が進まれていく。
自己紹介みたいな面倒臭い事しなくて良かったはずなのに、あたしはドキドキしていた。
何故かというと――――
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