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「しつれい……します」
職員室のドアを人差し指で開けて、足よりも先に顔だけ出してみる。
目の前には、まるであたしが来るのを待ち構えていたかの様に腕を組んでる先生がドーンと立ちはだかっていた。
☆ ★ ☆
案の定、先生の言いたい事は全教科、平均点の半分にも及ばないあたしの成績の事。そして人とコミュニケーションを取るのが苦手な性格の事だった。
「頑張ればできる」
口ではそう言ってるけど、『どうして君はそんなに要領が悪いんだ』と、組んでいた両腕を腰に当ててあたしを上から見下ろしてくる。血走った瞳からビシビシ伝わってくる心の声。
目を合わすのが怖い。
我慢ができなくなって逸らしたら、
「真面目に聞きなさい!!」と叱られた。
早くおうちに帰りたい……。
『保護者の方にも話をしておいた』なんて言ってたけど、一体何吹き込んだのだろう。
まさか『塾に通わせた方がいい』とか言って薦めたりなんかしてないだろうか。
はっきり言って“ありがた迷惑”。不幸にも1年生の時から続いてあたしのクラスの担任の、しかも陸上部顧問というヒドイ巡り合わせなこの先生、森田金八先生は熱血どころか一方的に自分の理想を押しつけてくる人なんだ。
『頑張ればできる』
できないよ……。どうやったら頑張れるの?
他人事だからって自分基準にして簡単に言わないでよ。
そんな事言われたって、どうしようもないんだもん。こんな性格じゃ――――
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