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通り過ぎたあたしの後ろ姿を見ながら、ヘタすると5軒くらい先の家まで響き渡る甲高い声で話し出す彼女達。
どうせ近所のおうちに住んでる主婦同士の会話なんだし、スーパーの特売の話だとか、お昼にテレビで見たワイドショーの話がネタだろうと思いきや――――
「いいわよねぇ、女の子は。可愛くって羨ましいわ」
「あらまあ。松浦さんったら何言ってんのよ。おたくの鷹史くんハンサムだし、頭もいいじゃない。ほーんとにもう、あの子ときたら勉強はしないわ、かといって家の手伝いも全然してくれないわで――――」
うわぁ……。
聞こえちゃってるよ“お母さん”。
あたしの話をしてるとは。
余計な事ベラベラ言っちゃって。
5軒どころじゃない。体の大きさに比例してる声。さらにあのお母さんはあちこちで無駄に交友関係広げてるせいで、多分7、8軒先辺りまであたしの“ぐうたらネタ話が行き届く模様。
『学校へ通う時や帰る時ぐらい、もっと元気良く行きなさい』って、しょっちゅう言われてるけど、こんなんじゃ胸張ってなんて歩けない。
気持ちわるい……。
まるで“あの人”があたしに仕掛けた罠の様に、足元のアスファルトに誰かが捨てたガムがへばり付いてる。
危うく踏んづけそうになった。
もし下向いて歩いてなかったら踏んづけて靴の裏がガムまみれになってたかもしれない。
味が無くて美味しさも消えた、周りに迷惑しかかけない堕ちて凹んだガム。
こんな風に、気に入らないものに何か理由付けてお母さんから逃げようとしてるあたしもこれと似てる。
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