予兆

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『日本政府は環境省に国土監視局を設置し、地表に到達する紫外線量の計測と、地上への違法侵入者に対する取り締まりを行っています。健康維持増進法という法律は皆さんもご存じでしょう? 未成年者は、主に健康上の理由で地表への侵入が禁止されています。成人でも地表へ出る場合には国土監視局の許可を得る必要があるんです。これは厚生省が実施している地表紫外線到達量と、がん及び白内障発症率に関する疫学調査の結果に基づいているんですが……』 「お前さ、あのおばさんが何言ってるかわかるか?」  灰色の座席に浅く腰掛け、腕を組みながらドームスクリーンを見上げていた城崎友樹(しろさきともき)は、隣に座る池守淳(いけもりじゅん)に声をかけた。座席が並ぶ円形施設中央には、ドームスクリーンに映像を写し出すための投影機(プラネタリウム)が設置されており、その隣でマイクを握る博物館職員が映像に解説を加えているのだ。 「まぁね」 「お前って、やっぱりすげえな……。エキガクチョウサってなに? 難しすぎて、なに言ってんのか、全く分かんないんだけど」 「友くん、静かにしなきゃだめだよ」  友樹の後ろから声をかけた小柄な少女、平嶋希里(ひらしまきさと)は、『静かに』 と言うように口に人差し指をあてている。その隣に座っている折野綾(おりのあや)は、そんな二人の様子を見て苦笑していた。 「へいへい。ったく」 『紫外線から私たちの身を守るために、地表から200メートル地下に建設された施設が、皆さんが暮らしているゲゼルシャフトです。旧東京市街の真下に位置しているこのゲゼルシャフト東京は、2170年に建造が開始され、現在も拡張工事が続けられています』     
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