予兆

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 綾が希里の顔を覗き込むと、真っ青な顔をした彼女は「ごめん、少し疲れちゃったみたいで……」と小声でいった。友樹は、肩で息をしている希里の背中を支えると、彼女の右腕を自分の左肩にかけ、ゆっくりと立ち上がる。 「俺、こいつ送ってくわ、家めっちゃ近いし。んじゃな」  車道脇に等間隔で建てられている人工灯の光が、居住階層に通じる東大通りに、友樹と希里の影を作っていく。残された淳と綾は、そんな二人の背中をしばらく見つめていた。 「あの二人、仲いいよね。さあ、僕たちも帰ろう」 「幼馴染だからね……。ねぇ、淳。空って、なんで青いのかな」 「レイリー散乱だよ」 「レイリー散乱?」 「光は波のようなものだからね。空気中の微粒子にぶつかると光が散乱するのさ。光の波長が短い青い色ほど強く散乱するから、僕らには空が青く見えるってわけ」 「淳って、何でも知っているのね」  綾の前を歩く淳は、ふと立ち止まって振り返る。 「いいの? 綾は」 「えっと、なんのこと?」  首をかしげる綾に 「難しいよね、自分の気持ちと向き合うのって」 といった淳は、再び歩き出した。 「ちょっと、何言ってるのよ」 「何でもないよ」
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