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希望
白いシーツの上に横たわる希里は、見た目にはいつも通りだった。しかし、彼女の細い腕から延びる複数の点滴管が病状の深刻さを物語っていた。
「ごめんね。もう学校には行けないと思う」
「なに言ってんのさ。きっと大丈夫だ」
希里の母親の話では、白血病に加え膵臓にもがんがあるらしい。かなり進行しており、積極的な治療は困難とのことだった。
「なんかね。足に力が入らなくて。だから歩けないの」
「大丈夫だっての。俺がおんぶしてやっから」
彼女に残された余命は3か月だという。
「わたし、子供じゃないし、そんなの嫌だよ」
「ああ、そうだな。じゃ、あれだ。車椅子とかあるし。とにかく心配するなっての」
――たった3か月。
「うん。友くんね、ありがとう」
「なあ、お前、空が見たいって、そう言ってたよな」
「うん。でもね、わたし、きっと大人になれないから……」
未成年が地表へ出ることは法律で禁止されている。しかし、彼女は大人になる前にきっと死んでしまうだろう。
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