そして、彼女は消えた

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 1階の共同ロビーに着いた所で、管理人は「取ってくる」と言って関係者用と書かれた入口に消えて行った。俺と森内はその場に取り残され、突っ立ったまま、その後ろ姿を眺めた。会話は、無かった。  数分程して、管理人が本を1冊右手に携えてやって来た。 「これだ」 ほれ、とでも言うように差し出されたのは。  「『青い鳥』……?」  俺が受け取った本を、森内が横から覗き込む。  それを見た瞬間、彼女が伝えたかった事が分かった気がした。  「……だから、『青』だったんだ」 「え?」  「じゃあ。確かに渡したから」とだけ言って管理人は去って行った。  俺は鞄から彼女の手紙を取り出し、森内に本を一旦預けて便箋を開く。  右下に貼りつけられた、青い鶴。  「『青い鳥』だ。幸せを呼ぶ、青い鳥」  俺はゆっくりと鶴を便箋から離し、元の紙に戻してみた。中に、何か小さく書いてある。  『全て、青い鳥に託します』  その文字を認めて、俺は本を後輩の手からひったくり、表紙を開いた。  「足立さん?」 「見ろ。これ」  そこには、少し長い文章が横書きで書かれていた。青いボールペンで書かれた、細く小さなきれいな文字。  日ノ宮 遥がまだ手書きで原稿を書いていた頃に読んでいた柔らかい字だった。
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