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ふわっと風に吹かれ、私は静かに目を開けた。
右手にボールペンを握り、左腕に赤ちゃんの人形を抱いている。ボールペンはどこにでも売っているような普通のもの。赤ちゃんの人形は猿みたいで可愛らしい。
今、私は透き通るような青い空の中にいた。どういうわけか空を飛んでいる。フワフワして気持ち良い。
「気持ち良いね、モンちゃん」
私はモンちゃんと名付けた赤ちゃんの人形に話しかけた。「あうー」とモンちゃんが声を上げる。
「モンちゃん、言葉がわかるのね!」
モンちゃんがニコッと微笑んだ。キュンとなった私は、モンちゃんの頬と自分の頬を擦り合わせた。
それにしても何もない青い空。ふと物足りなさを感じた私は、右手に握っていたボールペンで雲の絵を描いた。
「やっぱり空には雲くらいなくっちゃね」
るんるん気分でお絵描きする私。「あっ」と、雲を描き終えてから気付いた。ボールペンは黒インク。私が描いた雲の絵は雨雲になってしまった。
雨のニオイが私の鼻先をかすめる。突然「ホギャー!」と、モンちゃんが大声で泣き出した。
「ど、どうしたの?」
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