けがれなき空に

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 ふわっと風に吹かれ、私は静かに目を開けた。  右手にボールペンを握り、左腕に赤ちゃんの人形を抱いている。ボールペンはどこにでも売っているような普通のもの。赤ちゃんの人形は猿みたいで可愛らしい。  今、私は透き通るような青い空の中にいた。どういうわけか空を飛んでいる。フワフワして気持ち良い。 「気持ち良いね、モンちゃん」  私はモンちゃんと名付けた赤ちゃんの人形に話しかけた。「あうー」とモンちゃんが声を上げる。 「モンちゃん、言葉がわかるのね!」  モンちゃんがニコッと微笑んだ。キュンとなった私は、モンちゃんの頬と自分の頬を擦り合わせた。  それにしても何もない青い空。ふと物足りなさを感じた私は、右手に握っていたボールペンで雲の絵を描いた。 「やっぱり空には雲くらいなくっちゃね」  るんるん気分でお絵描きする私。「あっ」と、雲を描き終えてから気付いた。ボールペンは黒インク。私が描いた雲の絵は雨雲になってしまった。  雨のニオイが私の鼻先をかすめる。突然「ホギャー!」と、モンちゃんが大声で泣き出した。 「ど、どうしたの?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加