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・・・尾行られてる?
星月ショウはBMWのハンドルを右に切ると、バックミラーでもう一度、後方を確かめた。サングラス越しのミラーには、一定の間隔を保ちながら付いてくる黒い小型バンの姿が映っている。
怪しいな・・・。
ショウはアクセルを踏み、一気にスピードを上げた。黒いバンも釣られるようにスピードを上げる。
突然、BMWが左側の狭い裏道へと飛び込んだ。不意を突かれたバンはハンドルを切れず、そのまま直進して行く。
遠ざかるバンの後ろ姿を確認すると、ショウは路地を使って車を回し、今来た道を遡りはじめた。
撒けた・・・か?
ホッと一息つき、カーナビに目をやる。首都高のインターチェンジまではあと少し。時刻は6時を回った所だった。
全く、こんな朝早くから連中もご苦労さんだな・・・。
「ハル、ハヤトからのメッセージを再生して」
ショウは車に搭載されたAIに指示を出した。好きな映画にちなんで“ハル”と名付けている。
「了解しました。久宝ハヤト様からのメッセージを再生します」
そう答えると、ハルは前方のスピーカーからメッセージを流しはじめた。
「・・・星月くん、ご無沙汰してます、ハヤトです。来る5月25日は星月くんの60回目の誕生日ですね。そこで、本当に久しぶりですが星月くんのバースデー会を催したいと思います。忙しいのは承知していますが、是非スケジュールを調整してもらえると嬉しいです。では、久しぶりに会える日を楽しみにしています!」
「受信日時は3月22日午後10時23分です」
メッセージが終わるとハルが受信日時を告げた。
もう16年近くも連絡を取っていなかったハヤトから、突然、連絡が来たのは丁度2ヶ月前のことだった。電話はなく、音声によるメッセージだけが一方的に送られきた。
もちろん、それ自体は不思議なことではない。5歳下のハヤトは良い後輩だったが、コミュニケーションの取り方には昔から独特な所があった。思えば古くからの付き合いなのに、ショウはハヤトのプライベートをほとんど知らなかった。
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